2017,3,22 「バトン」

「バトン」



祖父は、私の事を忘れた。

90歳を過ぎ
お正月には、まだかろうじて
覚えていたけれど

今回の帰省で
祖父の記憶から、私は消えていた。

けれど目が合った時に

“知っている”
という、嬉しそうな顔が
頭から離れない

裏腹に、口から出たのは
「どこのお嬢さんだったかな?」
という言葉だった。

数年前から、始まり
祖父の中から少しづつ
様々なものが消え始めた

それは、緩やかなもので
数ヶ月事に帰省する私には
ほぼ分からないくらいの変化だったけれど

少しづつ
消えていく記憶と
衰えていく、身体の機能は顕著になり

命は続いているけれど
祖父の自我が消えていくのを感じる。

私の祖父は
若い頃、太平洋戦争に行き
その後捕虜となり2年間ロシアにいた。

その時に、一緒だった仲間は
ほとんど生きて帰る事ができず

私の祖父も
家族や親戚から、亡くなったと思われていて
身一つで帰ってきた祖父は

その後の人生で、祖母と出逢った。


祖父は、言葉少なく
いつも端でニコニコしている
穏やかな人で

祖父の口から
戦争や、過去の事を聞いた事は無く

私が恐らく
高校生くらいの時に

昔、祖父が依頼されて書いた
戦争手記の原稿を見つけて読み
とても壮絶な経験をしていた事を知った。

その中に書かれていたのと
目の前の祖父が同一人物である事が
ピンと来ないくらい

映画の中の様な、別世界だった。

その時からなのか
もっと以前からなのか分からないけれど

私にとって、気付けば

生きる事と、死ぬ事
どんな時も、この二つが
すぐ側にある

"生きている"というよりは
何か役割があるから生かされている

ずっとそんな感覚

原稿の中で祖父が生きていたのは
生死が紙一重の場所

そこで、生かされ
私へ繋がれた“何か”を
ずっと模索していた気がする。

お金や地位、認証欲求でもなく

ずっとその“何か”を
求め続けては
たどり着けないその答えみたいなものに

生きていて、沢山の幸せを感じる中にも
いつも満たされないものがあった。

私にとって、祖父母は
上手く言えないけれど
私の土台の様なもの

人の本質的な幸せを
感じさせてくれる人達で

特に、もの作りという表現は
祖母からのものだと思っている。

その二人の光が
数年間の内に
少しづつ小さくなっているのを感じながら
私の内側が大きく動いている。

今まで護ってもらっていた中で
ふわふわといたけれど

この人達に繋いでもらった命と
注いでくれた光


今度は
私自身が、輝かせて
繋いでいくものだというのを
目の前に突き付けられる。

それは

今、ここを
本当に大切に生き

絶えず過ぎていく時間の中で
全力で、自分と向き合う事

他の誰かではなく
自分自身の望む幸せを叶えていく為に
一日を、重ねていく事

その一つ一つは
特別な事ではなくて
恐らく、とても淡々としたものだけど

継続する
芯を、強く太くしていく

少しでも長く
健康で、幸せであり続ける

多くても少なくても
数はどちらでもいい

大切な人やモノを愛する事

答えは、いつか
後ろを振り返ると
見えてくるのだと思う

そろそろ、ちゃんと
生きていく時で

最後の時まで
自分の人生を生き抜くために

プロセスを重ね続ける
一つの覚悟

世代交代というのは
そうせざるえない時なんだなと
静かに感じる数日

でも、祖父が今生きていて
祖母が、笑っている顔を見るだけで
泣きたいくらい幸せになる

人の幸せの形はそれぞれだけど
私は今、幸せだ。

この一瞬一瞬を頂いている事
それだけでありがたい

好きな人が生きて
笑顔を向けてくれる事が
こんなに、こんなに
奇跡みないな事なんだと

心から、そう思った。

一日、そして
過ぎ去る一瞬一瞬はとても美しい


その中で
何ができるか
何がしたいか

もう少しゆっくり
自分と語り合ってみよう。

それが何であっても正解で
途中で変化しても良い

ただ一つだけ確かな事は
生き続ける事

明日も、沢山の美しい奇跡と共に
生きていきたい

皆様にとって
良い日となります様に
そんな、祈りを込めて。



2017,3,22


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by marikokawamoto | 2018-03-31 07:21 | diary | Comments(0)

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